用語解説

SAR

SAR(Synthetic Aperture Radar / 合成開口レーダ)

  SARは合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar)と呼ばれるセンサの名称で、一般的に「サー」と呼ばれている。
SARは衛星から地表面にマイクロ波を照射し、その反射波を観測する能動型マイクロ波センサである。
SARは、夜間や雨天での観測が可能であるため、特に防災分野での利活用が注目されている。

SAR衛星

  SARを搭載した人工衛星のこと。SARは衛星以外にも航空機やUAVに搭載されることもある。

干渉SAR解析(InSAR / Interferometric SAR)

  干渉SAR解析とは、2回の異なる時期のSARデータから地表面の変動を捉える解析技術である。
同一の観測条件で観測された2回のSARデータより衛星と地表の距離を表す位相差をもとめる(干渉させる)ことで地盤沈下などがわかる。

波長帯

SARで観測に用いられるマイクロ波の主な波長帯はXバンド(波長:約3cm)、Cバンド(約6cm)、Lバンド(約24cm)の波長帯である。
土地被覆により解析に用いるのに適切な波長帯が異なり、植生の多い日本では、波長の長いLバンドSARが適している。

時系列干渉SAR解析

時系列干渉SAR解析は、複数時期の観測データを用いて時系列の変位を捉える解析技術である。
2時期のみを用いた干渉SAR解析では、その2時期間の変化だけしか得られないが、複数時期の観測データを用いることで、時系列の変位の推移が得られる。
また、SARには水蒸気量や土地被覆の影響など様々なノイズが含まれる。
2時期だけではなく複数時期の観測データを用いることで、ノイズの低減も行える。

分解能

  分解能とは、測定器械や測定装置などで、物理量を識別できる能力のことである。
衛星画像において用いられるのは主に空間分解能のことであり、2地点を分離して見分けることのできる最小の距離のことを指す。

位相、位相差

マイクロ波は電界と磁界が直交して振動しながらエネルギーを伝搬する。
このとき振動周期の位相とは、周期的に変化する電界・磁界の位置を表したものであり、単位は角度やラジアンで表される。
干渉SARでは、2時期の観測データのマイクロ波の位相のズレ(位相差)から地表面の変動量を算出している。

後方散乱

 SARから照射されたマイクロ波が地表面等で散乱した後に、照射方向側に戻るマイクロ波の強さを「後方散乱強度」と呼ぶ。
後方散乱強度は散乱面の凹凸や粗度および入射角によって変わる。

フォアショートニング、レイオーバー、レーダーシャドウ

SARは斜めに地表面へマイクロ波を照射するため、地表面に起伏があると幾何学的な歪みが生じる。
観測対象が地形的に高所にある場合、衛星との距離が近くなるため、SARの画像上では衛星から見て手前側に投影される。
これをフォアショートニング(Forshortening)という。
さらに倒れこみが大きく、斜面の上部と下部の位置関係が逆転した場合の歪みをレイオーバ(Layover)という。
また、高い地物の影にあたる部分でマイクロ波が届いていない範囲をレーダーシャドウ(Radar Shadow)という。