用語解説

その他

建物の傾斜角・変形角

  建物に生じる不同沈下は、 建物が全体的に傾斜するか、 部分的に傾斜するかの違いで、 傾斜角タイプと変形角タイプに分かれます(実際には、 傾斜角と変形角が複合されたような形で不同沈下が発生します)。
 傾斜角タイプは、上部構造にはほとんど被害は出ませんが、 そこに住む人がめまいを訴えるなどのトラブルが発生します(住宅の外壁の傾斜角と基礎の傾斜角が一致しています)。
変形角タイプは、部分的な変形により、 上部構造に亀裂や歪みが発生します。

管理基準値

   斜面崩壊や地すべりの計測データは、挙動監視と挙動解析に用いることが一般的です。これらの場合、どのような挙動のときどういう対策や判断をするかの基準が管理基準値と呼ばれています。

 地すべりの管理基準値の設定については、一般に施工後(維持管理)のほうがより厳しく設定されます。管理基準値を警戒体制、緊急避難の際に用いる場合は、ゆるく設定しすぎると機能せず危険であり、厳しく設定しすぎると警報多発となり空振り率が多くなります。

地すべりの速さが10mm/時を超えると滑落し、10mm/時以下では地すべりのタイプ、地形、基岩生成年代、地質構造、面積、上部勾配などの諸要因ごとに滑落臨界速さが異なるとの報告があるため、地すべりの場合の管理基準値は、1〜20m/日程度で対策工の検討(地すべりの動きと認定)、10〜80mm/日程度になると作業中止や立ち入り禁止、80〜400mm/日で厳重な警戒体制となるケースが多いです。

 すべりの挙動は複雑で、短期的には大きな値でも、長期的にはそれほどでもない場合があります。地盤は、潮汐や温度変化および微小地震などに起因して常時変動しているため、計測器の感度、分解能によっては誤差評価が難しい場合があります。(山岳地で5〜8秒/日で基底累積速度は1.5秒/日以下)

 GPSを用いた地表面計測で管理基準値を決定する場合に、よく用いられる管理基準値は移動土塊と不動土塊をはさんで地表の2点間の距離の変化を測定、記録する伸縮計の管理基準値を参考にする場合が多いです。ただし、GPSの計測結果は3次元座標データとなるため、伸縮計の2次元データ(2点間の距離の変化)と比較する場合に取り扱いに留意する必要があります。しかし、過去の計測事例ではすべり方向と伸縮計の設置する方向が一致すればGPSと伸縮計はほぼ同程度の精度が得られています。