用語解説

強度と破壊規準

すべり面

  すべり面の実態については、単一な幾何学的な面ではなく、ある厚みをもったゾーン的なもので、全体的に粘土化していてもその中に多くの亀裂を伴います。そして、すべりが進行すれば、これら多くの亀裂を貫通して主変位面が形成されてすべり面が確定し、多くの場合連続した鏡肌面を呈するに至ります。この段階であれば、せん断強度は残留強度まで低下します。

ピーク強度と残留強度

  すべり面の強度にはピーク強度、残留強度、運動時のせん断強度があり内部摩擦角が異なるため、破壊線が異なります。初生すべりの場合は、通常ピーク強度の破壊線にせん断応力が達して破壊し、破壊後、せん断応力は残留強度の破壊線まで低下します。したがって、破壊時にかかっているせん断応力と破壊後のせん断強度の力の差ΔFが土塊のすべり運動に消費されます。
 一方、過去にすべりを起こした斜面(地すべり)で、すべり粘土のすべり方向への粒子の再配列によって鏡肌を呈しているすべり面は、残留強度の状態にあるので破壊しても純せん断強度が低下せず、せん断応力と破壊後のせん断強度の力の差ΔFがほとんどないため、少しの運動で安定を回復します。すべり面強度はφ要素だけとなるため、間隙水圧の影響で容易に変位します。このような地すべりを厳密にシミュレーションする場合は、すべり面強度を残留強度φとして変位に見合う水圧をすべり面に作用することになりますが、地すべり地では脈状に地下水が流れていることも多く、観測結果との整合性をとることは難しいことが多いです。
応力-ひずみ関係とストレスパス

ダイレイタンシー(dilatancy)

  せん断を受けるとひずみ硬化を示してピーク強度に達した後にひずみ軟化を起こし究極的には残留強度に至ります。このせん断過程で圧縮領域では、土粒子の結合状態が乱されるために体積膨張(ダイレイタンシー)を起こしますが、このダイレイタンシーは次第に減少し残留強度に至って消失し、これ以降は体積一定の状態で無限の変形を生じます。
 なお、体積収縮も負のダイレイタンシーと称されます。

計測変位を用いた斜面安定性評価法

  設計段階における斜面の安定性の評価は地盤材料の粘着力やせん断抵抗角などの強度に基づく安全率によっているのが一般的であるため、掘削中に変位を測定しても、その結果から直ちに斜面の安定性を評価することは極限平衡法では困難です。
 有限要素法による斜面安定評価法は、桜井春輔神戸大学名誉教授が提案する計測変位から斜面の安定性を評価する逆解析手法(土と基礎:地盤工学会Vol.49 No.7 Ser.No.522[PDFファイル574KB])です。
異方損傷パラメーターm