用語解説

測地系用語

ITRF94座標系

  International Terrestrial Reference Frame(国際地球基準座標系)1994の略語です。ITRF94座標系は、IERS(International Earth Rotation Service:国際地球回転観測事業)が構築した3次元直交座標系です。この座標系では、地球の重心に原点を置き、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点方向に、Y軸を東経90度の方向に、Z軸を北極の方向にとって、空間上の位置をX、Y、Zの数字の組で表現します。

GRS80系

  Geodetic Reference System(測地基準系)1980の略語です。GRS80は、IAG(International Association of Geodesy:国際測地学協会)及びIUGG(International Union of Geodesy and Geophysics:国際測地学及び地球物理学連合)が1979年に採択した、地球の形状、重力定数、角速度等地球の物理学的な定数及び計算式です。GRS80では、楕円体の形状や軸の方向及び地球重心を楕円体の原点とすることも定められています。この楕円体をGRS80楕円体といいます。

WGS-84

  World Geodetic System(世界測地系)1984の略語です。WGS84は、米国が構築・維持している世界測地系です。GPSの軌道情報で使われているほか、GPSによるナビゲ−ションの位置表示の基準として使われています。
GPSは、もともと軍事用で開発されたため、WGS系で運用されています。
 WGS84は、これまでに数回の改定を行っていますが、その都度ITRF系に接近し、現在ほとんど同一のものといえます。

世界測地系

  世界測地系とは、世界で共通に利用できる位置の基準をいいます。
 測量の分野では、地球上での位置を経度・緯度で表わすための基準となる座標系及び地球の形状を表わす楕円体を総称して測地基準系といいます。つまり、世界測地系は、世界共通となる測地基準系のことをいいます。
 測量法では、世界測地系を次のように定義しています。
 世界測地系とは、地球を次に掲げる要件を満たす扁平な回転楕円体であると想定して行う地理学的経緯度の測定に関する測量の基準をいう。
1. その長半径及び扁平率が地理学的経緯度の測定に関する国際的な決定に基づき政令で定める値であること。
2. その中心が、地球の重心と一致するものであること。
3. その短軸が、地球の自転軸と一致するものであること。
 これまで、各国の測地基準系が測量技術の制約等から歴史的に主に自国のみを対象として構築されたものであるのに対し、世界測地系は世界各国で共通に利用できることを目的に構築されたものです。世界測地系では、地球を良く近似している楕円体(準拠楕円体)で地球上の位置(経度・緯度及び平均海面からの高さ)を表します。また、これに代えて地球重心を原点とする3次元直交座標系を用いて表わすこともできます。世界測地系は、VLBI、GPS等の高精度な宇宙測地技術により構築維持されています。

日本測地系

日本測地系は、明治時代に全国の正確な1/50,000地形図を作成するために整備され、新測量法の施行日まで使用されていた日本の測地基準系を指す固有名詞です。日本測地系は、ベッセル楕円体を採用し、天文観測によって決定された経緯度原点の値と原方位角を基準として構築されました。
 座標値の調査計算は、ソロバンなどの手計算によって行われました。日本測地系は、構築以来百数十年を経過したので、その期間の地殻変動の影響や宇宙測量技術の進捗により判明した地球の形状と違っていることなどから2002年4月1日に新測量法が改正施行されました。

測地成果2000

  測地成果2000は、世界測地系に基づく我が国の測地基準点(電子基準点・三角点等)成果で、従来の日本測地系に基づく測地基準点成果と区別するための呼称です。測地成果2000での経度・緯度は、世界測地系であるITRF94座標系(International Terrestrial Reference Frame:国際地球基準座標系)とGRS80(Geodetic Reference System 1980:測地基準系1980)の楕円体を使用して表します。標高については、現在と同様に東京湾平均海面を基準に表します。
 測地成果2000の水平位置の算出は、宇宙測地技術を駆使したVLBIやGPSを利用した電子基準点の観測値に基づいて、全国の三角点について新たに計算を行って求めました。
 なお、三角点の標高については、測地成果2000の構築にあたって全国一斉に更新を行うことはせず、現在と同じく大きな変動が判明した地域について逐次更新を行います。

GRS80楕円体とITRF系との関係

  GRS80楕円体は、地球を近似する回転楕円体であり、その形状や大きさ及びその位置や向きが決められていますが、座標系については明確に決められていません。
 ITRF系は、GRS80楕円体と整合するように定義された3次元直交座標系をいい、地球の重心に原点を置き、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向に、Y軸を東経90度の方向に、Z軸を北極の方向にとって空間上の位置をX、Y、Zの数字の組で表現します。
 改正された測量法では、位置の表示に地心直交座標を用いることができることが新たに規定されましたが、この地心直交座標系として、具体的には1994年における地球の状態に基づいて規定されたITRF系の座標系であるITRF94座標系を使用して位置を表示することとしています。

ジオイド高

  ジオイド高とは、地球の形を最も良く近似している楕円体(準拠楕円体)からジオイドまでの高さを言います。
 ジオイドとは、地球を水で覆ったと仮定した時の地球の形を表している測地学・地球物理学の用語です。地球を構成している岩石の密度が一様でないため、ジオイドは楕円体から見ると多少でこぼこしています。また、ジオイドは、地球上にできる幾つかの水準面のうち、高さ0mを通る水準面でもあります。我が国では東京湾の平均海水面を0mとし、標高を求めています。つまり、ジオイドからの高さが標高になるわけです。

電子基準点

  国土地理院では、地震・火山等の調査研究のための地殻変動監視及び、各種測量の基準点として利用するために、全国に約1000点の電子基準点を設置しています。

 電子基準点は、高さ5mのステンレス製のタワーにGPS衛星からの電波を受信するアンテナと受信機が内蔵された構造になっています。得られたGPS観測データは、電話回線を通じて、つくば市の国土地理院に集められます。全国から集められたこれらの観測データは、国土地理院のホームページを介してダウンロードすることが可能です。

三次元網平均計算

  観測点の幾何学的な成果を得るために行う網平均計算で、複数のセッションにおける解析から得られた独立した基線ベクトルと分散共分散を使用し、三次元で網平均計算を行う方法である。

座標系変換

  GPS測量はWGS—84系にもとづいているので、通常の測量ではその結果をその国の測地系に変換する必要がある。この計算を座標系変換という。座標系変換はまず、楕円体の種類・原点・方向の違いを考慮して楕円体変換を行う。次にGPS観測で得られる楕円体高と従来の測地座標における標高とでは高さの定義が違うので、ジオイド比高を補正して、楕円体高から標高を決定する。この一連の作業で水平及び高さの変換が行われる。

レーザープロファイラー(laser profiler)

  レーザープロファイラーとは、航空機などから地上に向けてレーザパルスを照射し、地上から反射してくる光を受光盤でとらえ、その往復時間によって距離を測定し、数値標高データなどを取得するシステムである。
これにより航空写真測量より詳細な地形を把握することが可能である。なお高さの精度は約15cmである。

VLBI

  VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)とは、はるか数十億光年の彼方にある電波星(準星)から放射される電波を、複数のアンテナで同時に受信し、その到達時刻の差を精密に計測する技術である。
この技術により、大陸間のプレート運動を監視している。

SLR

  SLR (Satellite Laser Ranging:人工衛星レーザ測距)は、地上から人工衛星に向けてレーザ光線を射出し、反射してくるレーザ光の位相を望遠鏡で捉えることによって人工衛星の軌道を精密に計測し、その軌道のゆらぎから観測点自身の位置やその変化を知るものである。精度はVLBIと同程度ですが、VLBIが2地点間の幾何学的な距離を測定するのに対し、SLRは地球重心に対する観測点の位置を知ることができるため、上下変動の検出に有効であるという特徴がある。

合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar:SAR)

から地表や海面の様子を調査するためのレーダーである。この特徴は、高分解能である。例えば日本の地球観測衛星「ふよう」(JERS-1) の合成開口レーダーは、高度568Km の軌道から地表分解能18mを達成している。
また現在では、干渉SAR画像より地殻変動の検出の研究も進められている。

平面直角座標系

  地球上の点の水平位置は、厳密には準拠楕円体上の地理学的経緯度によって表されるべきだが、位置・方向・距離等を平面上に投影して測量計算を行うことは曲面上に比べ非常に簡単になり便利である。また、公共測量のように測量範囲が狭い場合には、十分正確に表すことができる。日本で用いられている平面直角座標は、ガウス・クリューゲルの等角投影法によるもので、座標原点を通る子午線は等長に、図形は等角の相似形に投影されている。

準拠楕円体

  世界測地系(GRS80楕円体)などでは、地球を良く近似している楕円体(準拠楕円体)で地球上の位置(経度・緯度及び平均海面からの高さ)を表す。現在ではGPSやVLBUIなどの宇宙測地技術のおかげで、楕円体の形状がより正確にわかってきた。世界測地系の長半径は6,378,137m、扁平率は1/298.25722101としている。また、これに代えて地球重心を原点とする三次元直交座標系(ITRF94座標系)を用いて表わすこともできる。

水準測量

  水準測量とはレベルと標尺を使って、既設点から求点の標高や比高を求める測量である。

基準点(局)

  基準点(局)とは、変動量計測の不動と定義する点である。基準点の選定の際には、地盤や地形、周囲の状況を考慮して決定する必要がある。

計測点(移動点、観測点)

  計測点とは、変動量計測のポイントとなる箇所である。計測点の選定の際には、対象地域や対象物の挙動を詳細にとらえる必要があるので、充分に検討し効果的に配置する必要がある。

計測精度

  計測精度は、計測対象物を充分に理解した上で、センサーの分解能と特性、形状、コストなどを吟味して決定する必要がある。また建設施工管理で、自動計測管理システムを導入する場合には、システムの安定性などを考慮する必要がある。